『悉曇字記』の構成について、現代的観点から云えば序説・概説・本論の三部構成となっています。序説において先ず悉曇とは印度の文字であり、それをいかに智廣が般若菩提という南天竺の僧から学び受けたかの経緯が明かされています。智廣が何故、悉曇に興味を持ったのかの契機とその問題意識が示され、おそらくは偶然に梵僧から受学することが出来た悉曇について『悉曇字記』という書として世に呈する目的が述べられます。
そしてその概説に入っていくのですが、しかし、これを梵字悉曇について全く触れたことのない者が読み進めても、何を言っているのか全く理解できないようなものとなっています。最低でも、それは概説を終えた後の本論の冒頭で説かれるのですが、梵字の字表および十八章建てで示される諸字を見て知っていなければ、意味不明となるでしょう。
したがって、『悉曇字記』はむしろ序説を読んだ後に概説を飛ばし、先に本論に目を通した後に概説を(本論を適宜参照しながら)読んだならば、理解しやすいものとなるでしょう。あるいは、もし順に読み進めていくのであれば、その概説で言っていることは本論を読んだ後に再度読めばようやく理解できるものであって、その最初は意味がわからないのが当然であって、とりあえず目を通しておくものと承知しておかなければなりません。さもなければ、その途中でこれを学ぶのを 放擲することになりかねない。
智廣は般若菩提から本論(悉曇章)を聞き