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Dharmacakra
智慧之大海 ―去聖の為に絶学を継ぐ

智廣 『悉曇字記』

原文

悉曇字記

namasarva囉嚩二合rva社若 而也反二合yasina去聲已上題目

悉曇

na短阿字上聲短呼音近惡引
na長阿字依聲長呼別體作na
na短伊字上聲聲近於翼反別體作na
na長伊字依字長呼別體作na
na短甌字上聲聲近屋別體作na
na長甌字長呼別體作na
na短藹字去聲聲近櫻係反
na長藹字近於界反
na短奧字去聲近汙別體作na
na長奧字依字長呼別體作na
na短暗字去聲聲近於鑒反別體作na
na長痾字去聲近惡

義淨三藏云上之三對上短下長下之三對上長下短

右悉曇十二字爲後章之韻如用迦字之聲對阿伊甌等十二韻呼之則生得下迦機鉤 矩侯反 等十二字次用佉字之聲則生得佉欺丘 區侯反 等十二字次生伽其求 瞿侯反 等十二字已下例然且先書短迦字一十二文從第二字已下加其麼多即字形別也用悉曇韻呼之則識其字名也佉伽已下至叉字例然以成一章舊云十四音者即於悉曇十二字中甌字之下次有na紇里na紇梨nana梨四字即除前悉曇中最後兩字謂之界畔字也餘則爲十四音今約生字除紇里等四字也

體文亦曰字母

na迦字居下反音近姜可反
na佉字去下反音近去可反
na伽字渠下反輕音音近其下反餘國有音疑可反
na伽字重音渠我反
na哦字魚下反音近魚可反餘國有音魚講反別體作na加麼多

已上五字牙聲

na者字止下反音近作可反
na車字昌下反音近倉可反別體作na
na社字杓下反輕音音近作可反餘國有音而下反別體作na
na社字重音音近昨我反
na若字而下反音近若我反餘國有音壤別體作na

已上五字齒聲

na吒字卓下反音近卓我反別體作na加麼多
na侘字拆下反音近折我反別體作na
na荼字宅下反輕音餘國有音搦下反
na荼字重音音近幢我反
na拏字搦下反音近搦我反餘國有音拏講反別體作na加麼多

已上五字舌聲

na多字怛下反音近多可反別體作na
na他字他下反音近他可反
na𨹔字大下反輕音餘國有音𨹔可反
na𨹔字重音音近𨹔可反
na那字捺下反音近那可反餘國有音曩別體作na

已上五字喉聲

na波字鉢下反音近波我反
na頗字破下反音近破我反
na婆字罷下反輕音餘國有音麼字下不尖異後
na婆字重音薄我反
na麼字莫下反音近莫可反餘國有音莽

已上五字脣聲

na也字藥下反音近藥可反又音祗也反訛也
na囉字曷力下反三合卷舌呼囉
na羅字洛下反音近洛可反
na嚩字房下反音近房可反舊又音和一云字下尖
na奢字舍下反音近舍可反
na沙字沙下反音近沙可反一音府下反
na娑字娑下反音近娑可反
na訶字許下反音近許可反一本音賀
na濫字力陷反音近郎紺反
na叉字楚下反音近楚可反

已上十字遍口聲

右字體三十五字後章用三十四字爲體唯濫字全不能生餘隨所生具如當章論之

訓読

悉曇字記しったんじき

naナウmasarva二合rvaジャ 而也反・二合 yasiシッnaダン 去聲 已上題目

悉曇しったん

na短の上聲。短に呼べ。音、近くは惡引。
na長の聲に依り長く呼べ。別體にはnaに作す。
na短の上聲。聲、近くは於翼反。別體にはnaに作す。
na長の字に依て長に呼べ。別體にはnaに作す。
na短の上聲。聲近くは屋。別體にはnaに作す。
na長の長に呼べ。別體にはnaに作す。
na短のエイ去聲。聲近くは櫻係の反。
na長のアイ近くは於界の反。
na短のヲウ去聲。近くは汙。別體にはnaに作す。
na長のアウ字に依るに長に呼べ。別體にはnaに作す。
na短のアン去聲。聲え近くは於鑒の反。別體にはnaに作す。
na長の去聲。近くは惡

義淨ぎじょう三藏の云く、上の三對さんたいは上は短、下は長。下の三對は上は長、下は短なり。

右悉曇の十二字、後の章のいんと爲る。字のしょうヲウ等の十二韻に對して之を呼べば、則ち下のクウ 矩侯の反 等の十二字を生得しょうとくし、次に字の聲をもちうれば、則ちコウ 區侯の反 等の十二字を生得し、次にコウ 瞿侯の反 等の十二字を生ずるが如し。已下いげれいしてしかなり。しばらく先づ短の字一十二文を書て、第二の字り已下、其の麼多またくわうれば、即ち字形じぎょう別なり。悉曇の韻を用て之を呼べば、則ち其の字の名をるなり。已下、字に至て例して然なり。以て一章を成す。ふるく十四音と云ふは、即ち悉曇の十二字の中のヲウ字の下に於て、次にṛnananaの四字有り。即ち前の悉曇の中の最後の兩字を除く。之を界畔かいばんの字と謂ふなり。餘を則ち十四音と爲す。今は生字しょうじに約して、等の四字を除く

體文たいもん 亦は字母と曰ふ。

na 居下の反なり。音、近くは姜可の反。
na 去下の反なり。音、近くは去可の反。
na 渠下の反。輕音。音、近くは其下の反。餘國に音有り。疑可の反。
na 重音。渠我の反。
na 魚下の反。音、近くは魚可の反。餘國に音有り。魚講の反なり。別體にはnaに作す。麼多を加ふ。

已上いじょう五字牙聲げしょう

na 止下の反。音、近くは作可の反。
na 昌下の反。音、近くは倉可の反。別體にはnaに作す。
na 杓下の反。輕音。音、近くは作可の反。餘國には音有り。而下の反。別體にはnaに作す。
na 重音。音、近くは昨我の反。
na 而下の反。音、近くは若我の反。餘國に音有り、壤。別體にはnaと作す。

na 卓下の反。音、近くは卓我の反。別體にはnaと作す。麼多を加ふ。
na 拆下の反。音、近くは折我の反。別體にはnaと作す
na 宅下の反。輕音。餘國に音有り。搦下の反。
na 重音。音、近くは幢我の反。
naドウ 搦下の反。音、近くは搦我の反。餘國に音有り。拏講の反。別體にはnaと作す。麼多を加ふ。

na 怛下の反。音、近くは多可の反。別體にはnaと作す
na 他下の反。音、近くは他可の反。
na𨹔 大下の反。輕音。餘國に音有り。𨹔可の反。
na𨹔 重音。音、近くは𨹔可の反。
na 捺下の反。音、近くは那可の反。餘國に音有り。曩。別體にはnaと作す。

na 鉢下の反。音、近くは波我の反。
na 破下の反。音、近くは破我の反。
na 罷下の反。輕音。餘國に音有り。麼字の下も尖からず。後に異なり。
na 重音。薄我の反。
na 莫下の反。音、近くは莫可の反。餘國に音有り。莽。

na 藥下の反。音、近くは藥可の反。又の音は祗也の反。訛なり。
na 曷力下の反。三合なり。舌を卷て囉と呼べ。
na 洛下の反。音、近くは洛可の反。
na 房下の反。音、近くは房可の反。舊くに又の音は和。一つには云く、字の下も尖どなり。
naシャ 舍下の反。音、近くは舍可の反。
na 沙下の反。音、近くは沙可の反。一つの音は府下の反。
na 娑下の反。音、近くは娑可の反。
na 許下の反。音、近くは許可の反。一つには本音、賀。
llaṃラン 力陷の反。音、近くは郎紺の反。
na 楚下の反。音、近くは楚可の反。

字體じたい三十五字、のちの章には、三十四字を用てたいと爲す。ただラン字は全くしょうずることあたはずは隨て生ずる所なり。つぶさには當章とうしょうに之を論ずるが如し。

脚註

  1. naナウmasarva二合jñaジャ 而也反・二合yasiシッnaダン 去聲

    底本における悉曇の綴りを梵語に変換し、ローマ字にて記したならば「nama sarvajñaya siddāṃ」。しかし、これは梵語として不正であり、正しくはnamaḥmaḥrvajñāyasina(namaḥ sarvajñāya siddaṃ)。あるいはmamomaḥrvajñāyasina(namo sarvajñāya siddaṃ)。その意は「一切智者に帰依す、成就」となるが、最後のsiddaṃ(成就)は帰依文に含めて解すべきものではないであろう(その根拠は次註にて述)。
    伝統的に「jña」とされてきた字形jñāはしかし、本書に示される合成の規則からすれば「jtu」あるいは「jnu」としか読めない。本来はjña(jña)・jñā(jñā)が正しいであろう。では、これが智廣に基づく誤字・誤伝であるかといえばそうではない。いわゆる「法隆寺貝葉」は、印度にて印度人の手によって書かれたものとは思われぬ点があるものの、現存するものとしては世界最古と目される貝葉であって、そこに含まれる『梵文般若心経』においても「jñā」に該当すべき字はjñā(「法隆寺貝葉」から転写)と、大凡同様の字形で記されている。なお、「法隆寺貝葉」の『梵文般若心経』の冒頭もまた帰依文から始まるが、そこではnamassarvajñaya(namassarvajñaya)と綴られている。
    囉嚩二合の「二合」は、その字について体文二字の切継、すなわちraとvaの接合文字rvaであることを示す。また娑の「上」は、その音について四声(しせい)の上声、曇去聲は去声で発音すべきことを示したもの。いずれも悉曇の発音を正確なものとするための、支那におけるいわば発音記号。社那而也反の「而也反」は那の発音が而と也の反切(はんせつ)であることを意味する。ただし、智廣は唐代の人で五台山にて梵語を学んでいることから、反切は唐代の、あるいは五台山のある華北における音をもって理解すべきであり、日本の漢音でこれを考察しても全く意味をなさない。そして古代支那の音を『韻鏡』など韻書を用いてある程度推測することは出来ても正確に解することは非常に困難。

  2. 已上いじょう題目だいもく

    ここにある「已上」はただ「悉曇(siddāṃ)」にのみかかる語であって、先の「娜麼娑囉嚩社若也(nama sarvajñaya)」にかかるものではない。してみれば、ここで梵字で示された一節は「nama sarvajñaya」と「siddāṃ」とを分け解すべきもの。
    悉曇という語が題目として通用していたことは、慧遠『涅槃経義記』巻四に「悉曇兩字是題章名」(T37, p.707a)とあり、また往古数々の「悉曇章」と題された書があった記録によって確かであろう。ただし、慧遠は悉曇という語を母音だけでなく子音も含めた五十二字も意味するものとして云っていたかのようである。

  3. a短の

    異体: aaa
    Devanāgarī:  
    Roman : a 
    『字母』:阿 
    『釈義』:阿上聲呼 
    《澄禅》:ア 
    《中天》:ア 
    《南天》:ア 

  4. ā長の

    異体: āāā 
    Devanāgarī: 
    Roman : ā 
    『字母』:阿引去 
    『釈義』:阿去聲長引呼 
    《澄禅》:アヽ 
    《中天》:アヽ 
    《南天》:アヽ 

  5. i短の

    異体: iiiiiii 
    Devanāgarī: 
    Roman : i 
    『字母』:伊 
    『釈義』:伊上聲 
    《澄禅》:イ 
    《中天》:イ 
    《南天》:イ 

  6. ī長の

    異体: īīīīīīī 
    Devanāgarī: 
    Roman : ī 
    『字母』:伊引去 
    『釈義』:伊去聲引呼 
    《澄禅》:イヽ 
    《中天》:イヽ 
    《南天》:イヽ 

  7. u短の

    異体: uu 
    Devanāgarī: 
    Roman : u 
    『字母』:塢 
    『釈義』:塢 
    《澄禅》:ウ/ヲウ 
    《中天》:ウ 
    《南天》:ウ 

  8. na長の

    異体: aa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ū 
    『字母』:汚 
    『釈義』:汚長聲 
    《澄禅》:ウ/ヲウ 
    《中天》:ウヽ 
    《南天》:ウヽ 

  9. e短のエイ

    異体: ee 
    Devanāgarī: 
    Roman : e 
    『字母』:曀 
    『釈義』:噎 
    《澄禅》:エ/エイ 
    《中天》:エイ 
    《南天》:エ 

  10. ai長のアイ

    異体: aiai 
    Devanāgarī: 
    Roman : ai 
    『字母』:愛 
    『釈義』:愛 
    《澄禅》:アイ 
    《中天》:アイ 
    《南天》:エ 

  11. o短のヲウ

    異体: oo 
    Devanāgarī: 
    Roman : o 
    『字母』:汚 
    『釈義』:汚長聲 
    《澄禅》:ヲ 
    《中天》:ヲヽ 
    《南天》:ヲヽ 

  12. au長のアウ

    異体: auau 
    Devanāgarī: 
    Roman : au 
    『字母』:奧 
    『釈義』:奧去聲引 
    《澄禅》:アウ 
    《中天》:アウ 
    《南天》:ヲヽ 

  13. aṃ短のアン

    異体: a 
    Devanāgarī:अं 
    Roman : aṃ 
    『字母』:暗 
    『釈義』:闇 
    《澄禅》:アン/エン 
    《中天》:アン 
    《南天》:アン 

  14. aḥ長の

    異体: aḥ 
    Devanāgarī:अः 
    Roman : aḥ 
    『字母』:惡 
    『釈義』:惡 
    《澄禅》:アク/ア 
    《中天》:アク 
    《南天》:アク 

  15. 義淨ぎじょう三藏の云く

    義浄は唐代の僧(635-713)。法顕や玄奘への憧憬から自身も入竺し、二十五年の長きにわたり当地の僧院生活やその文化・風俗などを事細かに記録。帰朝に際して多くの仏典をもたらし、その漢訳に携わった。その著『南海寄帰内法伝』は当時の印度における仏教の状況、僧院生活を知るに必須の典籍。義浄は律に詳しく、南山律宗における支那独自の行儀・見解を激しく批判した。
    ここで智廣が引いた義浄の説がいかなる書に基づいたものか不明。上の三対とはa(a)・i(i)・u(u)とā(ā)・ī(ī)・ū(ū)、下の三対とはe(e)・o(o)・aṃ(aṃ)とai(ai)・au(au)・aḥ(aḥ)の対。

  16. 字のしょう

    ka(ka)字。先述(①-註.27)したように、本書において智廣は韻と声(聲)とを使い分け、韻は母音のうち十二音(十二字)、声は子音について言うものとしている。

  17. ヲウ等の十二韻

    通摩多(通麼多)。a(a)・ā(ā)・i(i)・ī(ī)・u(u)・ū(ū)・e(e)・ai(ai)・o(o)・au(au)・aṃ(aṃ)・aḥ(aḥ)の母音のうち十二音を表す点画。

  18. クウ 矩侯の反 等の十二字を...

    ka(ka)字に十二韻を充てることにより、ka(ka)・kā(kā)・ki(i)・kī(kī)・ku(ku)・kū(kū)・ke(ke)・kai(kai)・ko(ko)・kau(au)・aṃ(kaṃ)・kaḥ(kaḥ)の十二字が生じること。

  19. ṛ

    異体: o 
    Devanāgarī: 
    Roman : ṛ 
    『字母』:哩 
    『釈義』:哩彈舌呼 
    《澄禅》:キリ/リ 
    《中天》:キリ 
    《南天》:キリ 

  20. ṝ

    異体: oo 
    Devanāgarī: 
    Roman : ṝ 
    『字母』:哩 
    『釈義』:哩彈舌去聲引呼 
    《澄禅》:キリ/リ 
    《中天》:キリ 
    《南天》:キリ 

  21. ḷ

    異体: oo 
    Devanāgarī: 
    Roman : ḷ 
    『字母』:𠴊 
    『釈義』:𠴊彈舌上聲 
    《澄禅》:リョ/リ 
    《中天》:リ 
    《南天》:リ 

  22. ḹ

    異体: oo 
    Devanāgarī: 
    Roman : ḹ 
    『字母』:𡃖 
    『釈義』:嚧彈舌長聲 
    《澄禅》:リョウ/リ 
    《中天》:リ 
    《南天》:リ 

  23. 界畔かいばんの字

    界畔字。aṃ(aṃ)とaḥ(aḥ)の両字。既述(①項・註.2)したように、本書において「悉曇」とは上記の十二音・十二字のみをいうものであるが、aṃ(aṃ)とaḥ(aḥ)の二音は、ただ例としてnaに付されたものであって母音でなく、また字でもない。原則として全ての母音と子音に付しえる記号・点、aṃaṃである。そこで、この両字が悉曇と体文との境界において示されるものであることから「界畔の字」とされる。
    ここで智廣はこれを般若菩提の師説であるかのように述べているが、その原語に該当するであろう梵語の語彙を見出し得ない。

  24. 等の四字を除く

    ṛ(ṛ)・ṝ(ṝ)・ḷ(ḷ)・ḹ(ḹ)の四字。

  25. ka

    Devanāgarī: 
    Roman : ka 
    『字母』:迦 
    『釈義』:迦上聲引 
    《澄禅》:カ 
    《中天》:キャ 
    《南天》:カ 

  26. kha

    Devanāgarī: 
    Roman : kha 
    『字母』:佉 
    『釈義』:佉上呼 
    《澄禅》:カ 
    《中天》:キャ 
    《南天》:カ 

  27. ga

    Devanāgarī: 
    Roman : ga 
    『字母』:誐 
    『釈義』:誐去引 
    《澄禅》:カ 
    《中天》:ギャ 
    《南天》:ガ 

  28. 輕音きょうおん

    いわゆる無気音。本書ではkaやtaなど「h」を伴わない音を軽音とし、khaやthaなど「h」を伴う音を重音と表現している。

  29. gha

    Devanāgarī: 
    Roman : gha 
    『字母』:伽去引 
    『釈義』:伽 
    《澄禅》:カ 
    《中天》:ギャ 
    《南天》:ガ 

  30. 重音じゅうおん

    いわゆる有気音。khaやthaなど「h」を伴う音。

  31. ṅa

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ṅa 
    『字母』:仰鼻呼 
    『釈義』:仰鼻聲呼 
    《澄禅》:カ/キャウ 
    《中天》:ギャウ  《南天》:ガ 

  32. 牙聲げしょう

    [S]kaṇṭhya. 軟口蓋音(velar)。五類声の一。

  33. ca

    Devanāgarī: 
    Roman : ca 
    『字母』:左 
    『釈義』:遮上聲 
    《澄禅》:サ 
    《中天》:シャ 
    《南天》:サ 

  34. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : cha 
    『字母』:磋 
    『釈義』:磋上聲 
    《澄禅》:サ 
    《中天》:シャ 
    《南天》:サ 

  35. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ja 
    『字母』:惹 
    『釈義』:惹 
    《澄禅》:サ 
    《中天》:ジャ 
    《南天》:ザ 

  36. na

    Devanāgarī: 
    Roman : jha 
    『字母』:酇 
    『釈義』:鄼上聲 
    《澄禅》:サ 

  37. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ña 
    『字母』:穰 
    『釈義』:孃上聲 
    《澄禅》:サ/シャウ 
    《中天》:ジャ 
    《南天》:ザ 

  38. 齒聲ししょう

    [S]tālavya. 口蓋音(palatal)。

  39. na

    異体: ṅaṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ṭa 
    『字母』:吒 
    『釈義』:吒上聲 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:タ 
    《南天》:タ 

  40. na

    異体: ṅa
    Devanāgarī: 
    Roman : ṭha 
    『字母』:咤 
    『釈義』:咤 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:タ 
    《南天》:タ 

  41. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ḍa 
    『字母』:拏 
    『釈義』:拏 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:ダ 
    《南天》:ダ 

  42. na

    異体: ṅaṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ḍha 
    『字母』:荼 
    『釈義』:荼 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:ダ 
    《南天》:ダ 

  43. naドウ

    異体: ṅaṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ṇa 
    『字母』:拏尼爽反鼻呼 
    『釈義』:拏陀爽反仍鼻聲呼 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:ダウ 
    《南天》:ダ 

  44. 舌聲ぜっしょう

    [S]mūrdhanya. 反舌音(retroflex)。

  45. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : ta 
    『字母』:多 
    『釈義』:多 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:タ 
    《南天》:タ 

  46. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : tha 
    『字母』:他 
    『釈義』:他 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:タ 
    《南天》:タ 

  47. na𨹔

    Devanāgarī: 
    Roman : da 
    『字母』:娜 
    『釈義』:娜 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:ダ 
    《南天》:ダ 

  48. na𨹔

    Devanāgarī: 
    Roman : dha 
    『字母』:馱 
    『釈義』:馱 
    《澄禅》:タ 
    《中天》:ダ 
    《南天》:ダ 

  49. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : na 
    『字母』:曩 
    『釈義』:曩 
    《澄禅》:ナ/ナウ 
    《中天》:ナウ 
    《南天》:ナ 

  50. 喉聲こうしょう

    [S]dantya. 歯音(dental)。

  51. na

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : pa 
    『字母』:跛 
    『釈義』:跛 
    《澄禅》:ハ 
    《中天》:ハ 
    《南天》:ハ 

  52. na

    Devanāgarī: 
    Roman : pha 
    『字母』:頗 
    『釈義』:頗 
    《澄禅》:ハ 
    《中天》:ハ 
    《南天》:ハ 

  53. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ba 
    『字母』:麼 
    『釈義』:麼 
    《澄禅》:ハ 
    《中天》:バ 
    《南天》:バ 

  54. na

    Devanāgarī: 
    Roman : bha 
    『字母』:婆去重 
    『釈義』:婆重上呼 
    《澄禅》:ハ 
    《中天》:バ 
    《南天》:バ 

  55. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ma 
    『字母』:莽 
    『釈義』:莽 
    《澄禅》:マ/マウ 
    《中天》:マウ 
    《南天》:マ 

  56. 脣聲しんしょう

    [S]oṣṭhya. 唇音(labial)。

  57. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ya 
    『字母』:野 
    『釈義』:野 
    《澄禅》:ヤ 
    《中天》:ヤ 
    《南天》:ヤ 

  58. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ra 
    『字母』:囉 
    『釈義』:囉 
    《澄禅》:アラ/ラ 
    《中天》:アラ 
    《南天》:ラ 

  59. na

    Devanāgarī: 
    Roman : la 
    『字母』:邏 
    『釈義』:邏 
    《澄禅》:ラ 
    《中天》:ラ 
    《南天》:ラ 

  60. na

    Devanāgarī: 
    Roman : va 
    『字母』:嚩 
    『釈義』:嚩 
    《澄禅》:ハ/ワ 
    《中天》:バ 
    《南天》:バ 

  61. naシャ

    異体: ṅa 
    Devanāgarī: 
    Roman : śa 
    『字母』:捨 
    『釈義』:捨 
    《澄禅》:サ/シャ 
    《中天》:シャ 
    《南天》:シャ 

  62. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ṣa 
    『字母』:灑 
    『釈義』:灑 
    《澄禅》:サ/シャ 
    《中天》:シャ 
    《南天》:シャ 

  63. na

    Devanāgarī: 
    Roman : sa 
    『字母』:娑 
    『釈義』:沙 
    《澄禅》:サ 
    《中天》:サ 
    《南天》:サ 

  64. na

    Devanāgarī: 
    Roman : ha 
    『字母』:賀 
    『釈義』:賀 
    《澄禅》:カ 
    《中天》:カ 
    《南天》:カ 

  65. naラン

    Devanāgarī:ळं 
    Roman : llaṃ 
    『字母』:(該当字無し) 
    『釈義』:(該当字無し) 
    《澄禅》:(該当字無し) 
    《中天》:ラン 
    《南天》:ラン 
    na字の自重に空点を付した字。本来、本字はすでに切り継ぎであるため体文ではない。しかし、体文の最後に切継(きりつぎ)の一例として示すため、伝統的にしばしば体文の中に含めて示される。

  66. na

    Devanāgarī:क्ष 
    Roman : kṣa 
    『字母』:乞灑二合 
    『釈義』:乞灑 
    《澄禅》:サ/キシャ 
    《中天》:キシャ 
    《南天》:サ 
    na字に同じく切継であるが自重でなく、na字とna字の二合。na + nana+ nana
    本字を含めると以上五十一字が羅列されたが、悉曇のnana、および先のnaとこのnaの四字は、あくまで例示として挙げられたもの。したがってそれら四字を除いたものが、玄奘のいう「本有四十七言」となる。

  67. 遍口聲へんこうしょう

    口中の歯・舌・喉など、その一部だけでなく全てを用いて発するとされる音。「へんくしょう」とも(ここでは澄禅のルビに従って「へんこうしょう」とする)。

  68. ただラン字は全くしょうずることあたはず

    ここで示された体文三十五字のうち、naは実際に用いられる字音でなく、したがって悉曇十二韻を付して転じることはないため、十八章いずれにおいても生字とならず除外されること。

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