一.本稿にて紹介する『悉曇字記』は、私蔵する寛文己酉〈1669〉に澄禅が開版した『悉曇字記』を底本としている。
一.原文および訓読にては、底本にある漢字を現代通用する常用漢字に改めず、可能な限りそのまま写し用いている。これにはWindowsでは表記されてもMacでは表記されないものがある(表記できない文字は□と表示される)。Macにて表記されない漢字を表示させるには、別途「PMingLiU-ExtB(新細明體-ExtB)」をシステムフォントとしてインストールすることを要す。ただし、Unicode(UTF-8)に採用されておらず、したがってWindowsでもWebブラウザ上で表記出来ないものについては代替の常用漢字などを用いている。
一.訓読は、底本の訓点に従って読み下した。ただし、底本の読みが必ずしも正しくない場合があるが、そのときは脚註にてその誤りを指摘している。
一.ルビは定本に付されているものについてはすべて定本通りとした。ただし、ルビに関しては、旧仮名遣いであるばあいには現代仮名遣いに改めている。また、梵字の訓として充てられた音写にはカタカナとしている。他に難読あるいは特殊な読みを要する漢字や単語など、今の世人が読み難いであろうものには編者の判断で適宜ルビを多くの場合「呉音」にてルビを付している。
一.悉曇は現状ではテキストとして表記出来ないため、画像(PNG形式)にて記した。悉曇の一々の文字の原サイズは60×60pixelであるが、各項におけるサイズは適宜縮小表示されるよう設定している。
一.現代語訳においては読解に資するよう、適宜に常用漢字に改めた。また、読解を容易にするために段落を設け、さらに原文に無い語句を挿入した場合がある。この場合、それら語句は括弧()に閉じてそれが挿入語句であることを示している。しかし、挿入した語句に訳者個人の意図が過剰に働き、読者が原意を外れて読む可能性がある。そもそも現代語訳は訳者の理解が十分でなく、あるいは無知・愚かな誤解に由って本来の意から全く外れたものとなっている可能性があるため、注意されたい。
一.現代語訳はなるべく逐語訳し、極力元の言葉をそのまま用いる方針としたが、その中には一見してその意を理解し得ないものがあるため、その場合にはその直後にその簡単な語の説明を下付き赤色の括弧内に付している(例:〈〇〇〇〉)。
一.補注は、特に説明が必要であると考えられる語に適宜付し、脚注に列記した。
一.梵字にあてられた音写に片仮名でルビを付したが、原則として底本における四声点など音符の指示を含め、その通りに従っている。ただし、底本の音写すべてに付されてはいない。そこで、澄禅はまた『悉曇字母表并釋義』を寛文戊申〈1668〉に刊行しており、そこに収録した空海『梵字悉曇并釈義』などにて梵字各字を訓じているため、適宜参照して流用した。それをまた脚註にて《澄禅》として示している。
一.梵字にあてられた音写に付したルビは、あくまで近世前期の澄禅に代表される日本での一般的な訓を示したものであり、梵字本来の発音を表したものでは決してないことに注意。
一.梵字各字には伝統的読みとして、中天相承と南天相承とされるものが伝えられている。そこで、脚注にてそれらを《中天》・《南天》として片仮名にて示した。
一.本論に引用される経論は判明する限り、すべて脚注に『大正新脩大蔵経』に基づいて記している。その際、例えば出典が『大正新脩大蔵経』第一巻一項上段であった場合、(T1, p.1a)と記している。bは中段、cは下段である。
懸命なる諸兄姉にあっては、本稿筆者の愚かな誤解や無知による錯誤、あるいは誤字・脱字など些細な謬りに気づかれた際には下記宛に一報下さり、ご指摘いただければ幸甚至極。
愚老覺應
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