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Dharmacakra
智慧之大海 ―去聖の為に絶学を継ぐ

智廣 『悉曇字記』

原文

第一章
nana
右初章生字四百有八先於字母中毎字平書一十二文次將麼多如次點之則字形別也用悉曇韻呼之則識其字名也其麼多有別體者任逐便用之皆通此初章爲後相次六章之體先書此章字伹除重及囉羅三字合三十二字所生三百八十四字即將na也等字如次於下合之後加麼多則字字別也將悉曇十二韻相對呼之則識其字名也恐未曉悟更毎章頭書一二數字以爲規準後皆效此

第二章
na己也二合na紀耶二合na紀以二合na紀夷二合na矩庾二合na矩兪二合na枳曳二合na枳𡰅與蓋反na句兪二合na句曜庾告反na矩焔na已上第二章初字所生一十二文。後皆效此。讀者連帶。轉聲調韻呼之

第三章
nanana己里na機釐na苟漊na鉤婁呂鉤反餘同上

第四章
na迦攞na迦攞

第五章
na迦嚩na迦嚩

第六章
na迦麼na迦摩

第七章
na迦娜na迦娜

第八章
na阿勒迦na阿勒迦 na伊上力紀na伊力機na歐鹿苟na歐鹿鉤na醫力薊na醫力介na阿勒勾na阿勒憍脚號反na阿勒劍na阿勒迦
右第八章字同初章伹用半體na囉加諸字上後點麼多也又此章爲後相次六章字體同前第二已下也伹加半體na囉也

第九章
na阿勒已也na阿勒枳耶

第十章
na阿勒迦略na阿勒迦囉

第十一章
na阿勒迦攞na阿勒迦攞

第十二章
na阿勒迦嚩na阿勒迦嚩

第十三章
na阿勒迦麼na阿勒迦摩

第十四章
na阿勒迦娜na阿勒迦娜

訓読

第一章
nana
右、初章には字をしょうずること四百有八なり。先づ字母じもの中に於て、ごとひとしく一十二もんを書て、次に麼多またついでの如く之をてんれば、則ち字形じぎょう別なり。悉曇のいんを用て之を呼べば、則ち其の字の名をるなり。其の麼多に別體べったい有らば、ほんのまま便べんしたがって之を用ひよ。皆なつうず。此の初章は後の相次しょうじの六章の體とる。先づ此の章字を書け。伹しじゅう及びアラの三字を除ひて、三十二字に合して生ずる所、三百八十四字なり。即ちna等の字を將て、ついでの如く下に於て之を合して、後に麼多をくわうれば、則ち字字別なり。悉曇十二韻をて、相對して之を呼べば、則ち其の字の名をるなり。未だ恐れて曉悟ぎょうごせざるを、更に章のはじごとに一、二數の字を書て、以て規準とす。後、皆な此れにならへ。

第二章
na己也キヤ二合na紀耶キヤ二合na紀以キイ二合na紀夷キイ二合na矩庾クユ二合na矩兪クユ二合na枳曳キエイ二合na枳𡰅キヤイ與蓋の反na句兪クユ二合na句曜クヤウ庾告の反na矩焔クエンna已上、第二章の初字に生ずる所、一十二文なり。後、皆な此れに效へ。讀まん者の連帶、聲を轉じ韻を調べて之を呼べ。

第三章
nanana己里キリna機釐キリna苟漊コロウna鉤婁コロウ呂鉤の反。餘は上に同じ。

第四章
na迦攞カラna迦攞カラ

第五章
na迦嚩カバna迦嚩カバ

第六章
na迦麼カマna迦摩カマ

第七章
na迦娜カナna迦娜カナ

第八章
naキャnaキャnanana鹿コウna鹿コウnaケイnaカイnaコウnaカウ脚號の反naケンnaキャ
右、第八章の字、初章に同じ。伹し半體はんだいnaアラを用て、諸字の上に加て、後に麼多をてんずるなり。又、此の章は後の相次しょうじの六章の字體と爲ること、前の第二已下いげに同じなり。伹し半體のnaアラを加ふなり。

第九章
nana

第十章
nana

第十一章
nana

第十二章
nana

第十三章
nana

第十四章
nana

脚註

  1. 第一章

    本書で列挙された体文のうち、naラン字を除いた三十四字について悉曇十二韻をもって転じる基本にして最も重要な章。
    体文34字×12韻=408字

  2. ごとひとしく一十二もんを書て...

    日本の悉曇相承にて伝統的に「草紙(そうし)」といわれる字表の書き方を示した一節。第一章についてこれを云えば、体文各字を十二字(縦書きであれ横書きであれ)先ず書き、その十二字に十二韻の摩多を示す画を点じていくこと。
    na字を例としてそれが如何なることかを示せば、nanananananananananananaと先ず書き、その十二字に(a)・(ā)・(i)・(ī)・(u)・(ū)・(e)・(ai)・(o)・(au)・(ṃ)(ḥ)の摩多をそれぞれ点じて、(ka)・(kā)・(ki)・(kī)・(ku)・(kū)・(ke)・(kai)・(ko)・(kau)・(kaṃ)・(kaḥ)とすること。

  3. 悉曇のいん

    既述したように、悉曇とはその文字体系すべてをいうものでなく、あくまで摩多のうち四字(別摩多)を除いた十二の(a)・(ā)・(i)・(ī)・(u)・(ū)・(e)・(ai)・(o)・(au)・(aṃ)・(aḥ)の字と音のみを指す。

  4. 別體べったい

    別体・異体。ここでは摩多の十二韻のいくつかには体文に点ずるにあたって形の変化するものがあること。例えば(u)点には、あるいはの別体がある。

  5. 曉悟ぎょうご

    はっきりと理解すること。会得すること。
    澄禅本におけるこの一節「恐未曉悟」の訓読「未だ恐れて曉悟せざるを」は不審であり、思うに「恐らくは未だ曉悟せざるに」と読むべきものであろう。

  6. 第二章

    第一章の各字下部にya字(半体-ya)を切継した章。ただし、重字となるyya(yya)字を除く。
    408-12=396字

  7. 第三章

    第一章の各字下部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字となるrra(rra)字を除く。
    408-12=396字

  8. 第四章

    第一章の各字下部にya字(半体na)を切継した章。ただし、rla(rva)字および重字となるlla(lla)字を除く。
    408-24=384字

  9. 第五章

    第一章の各字下部にya字(半体na)を切継した章。ただし、rva(rva)字および重字となるya(vva)字を除く。
    408-24=384字

  10. 第六章

    第一章の各字下部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字となるya(mma)字およびrva(rva)字を除く。
    408-24=384字

  11. 第七章

    第一章の各字下部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字となるnna(nna)字およびrna(rna)字を除く。
    408-24=384字

  12. 第八章

    第二章の各字上部にra字(半体r-)を加えた章。あるいは第八章の各字下部に-yaを加えた章。いずれも同じ意味であって、ただ表現が異なるのみであるが、伝統では前者を南天相承における説といい、後者を中天相承における説とする。
    ただし、重字となるrra(rra)字を除く。408-12=396字。

  13. 第九章

    第二章の各字上部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字を含むryya(ryya)字およびrrya(rrya)字を除く。
    408-24=384字

  14. 第十章

    第三章の各字上部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字となるrrra(rrra)字を除く。408-12=396字。

  15. 第十一章

    第四章の各字上部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字を含むrrla(rrla)字およびrlla(rlla)字を除く。
    408-24=384字

  16. 第十二章

    第五章の各字上部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字を含むrrva(rrva)字およびrvva(rvva)字を除く。
    408-24=384字

  17. 第十三章

    第六章の各字上部にya字(半体ra)を切継した章。ただし、重字を含むrmma(rmma)字およびrrma(rrma)字を除く。
    408-24=384字

  18. 第十四章

    第七章の各字上部にya字(半体na)を切継した章。ただし、重字を含むrnna(rnna)字およびrrna(rrna)字を除く。
    408-24=384字

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