VIVEKA For All Buddhist Studies.
Dharmacakra
智慧之大海 ―去聖の為に絶学を継ぐ

Maṅgala sutta 『吉祥経』

原文

evaṃ(エーヴァン) me(メー) sutaṃ(スタン) ekaṃ(エーカン) samayaṃ(サマヤン) bhagavā(バガヴァー) sāvatthiyaṃ(サーヴァッティヤン) viharati(ヴィハラティ) jetavane(ジェータヴァネー) anāthapiṇḍikassa(アナータピンディカッサ) ārāme(アーラーメー). atha(アタ) kho(コー) aññatarā(アンニャタラー) devatā(デーヴァター) abhikkantāya(アビッカンターヤ) rattiyā(ラッティヤー) abhikkantavaṇṇā(アビカンタヴァンナー) kevalakappaṃ(ケーヴァラカッパン) jetavanaṃ(ジェータヴァナン) obhāsetvā(オーヴァーセットヴァー) yena(イェーナ) bhagavā(ヴァガヴァー) tenupasaṅkami(テーヌパサンカミ); upasaṅkamitvā(ウパサンカミットヴァー) bhagavantaṃ(バガヴァンタン) abhivādetvā(アビヴァーデットヴァー) ekamantaṃ(エーカマンタン) aṭṭhāsi(アッターシ). ekamantaṃ(エーカマンタン) ṭhitā(ティター) kho(コー) sā(サー) devatā(デーヴァター) bhagavantaṃ(バガヴァンタン) gāthāya(ガーターヤ) ajjhabhāsi(アッジャバーシ)

bahū(バフー) devā(デーヴァー) manussā(マヌッサー) ca(チャ), maṅgalāni(マンガラーニ) acintayuṃ(アチンタユン). ākaṅkhamānā(アーカンカマーナー) sotthānaṃ(ソッターナン), brūhi(ブルーヒ) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

asevanā(アセーヴァーナー) ca(チャ) bālānaṃ(バーラーナン), paṇḍitānañca(パンディターナンチャ) sevanā(セーヴァナー). pūjā(プージャー) ca(チャ) pūjaneyyānaṃ(プージャネッヤーナン), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

patirūpadesavāso(パティルーパデーサヴァーソー) ca(チャ), pubbe(プッべー) ca(チャ) katapuññatā(カタプンニャター). attasammāpaṇidhi(アッタサンマーパニディ) ca(チャ), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

bāhusaccañca(バーフサッチャンチャ) sippañca(シッパンチャ), vinayo(ヴィナヨー) ca(チャ) susikkhito(スシッキトー). subhāsitā(スバーシター) ca(チャ) yā(ヤー) vācā(ヴァーチャー), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

mātāpitu(マーターピトゥ) upaṭṭhānaṃ(ウパッターナン), puttadārassa(プッタダーラッサ) saṅgaho(サンガホー). anākulā(アナークラー) ca(チャ) kammantā(カンマンター), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

dānañca(ダーナンチャ) dhammacariyā(ダンマチャリヤー) ca(チャ), ñātakānañca(ニャータカーナンチャ) saṅgaho(サンガホー). anavajjāni(アナヴァッジャーニ) kammāni(カンマーニ), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

āratī(アーラティー) viratī(ヴィラティー) pāpā(パーパー), majjapānā(マッジャパーナー) ca(チャ) saṃyamo(サンヤモー). appamādo(アッパマードー) ca(チャ) dhammesu(ダンメース), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

gāravo(ガーラヴォー) ca(チャ) nivāto(ニヴァートー) ca(チャ), santuṭṭhi(サントゥッティ) ca(チャ) kataññutā(カタンニュター). kālena(カーレーナ) dhammassavanaṃ(ダンマッサヴァナン), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

khantī(カンティー) ca(チャ) sovacassatā(ソーヴァチャッサター), samaṇānañca(サマナーナンチャ) dassanaṃ(ダッサナン). kālena(カーレーナ) dhammasākacchā(ダンマサーカッチャー), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

tapo(タポー) ca(チャ) brahmacariyañca(ブラフマチャリヤンチャ), ariyasaccāna(アリヤサッチャーナ) dassanaṃ(ダッサナン). nibbānasacchikiriyā(ニッバーナサッチキリヤー) ca(チャ), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

phuṭṭhassa(プッタッサ) lokadhammehi(ローカダンメーヒ), cittaṃ(チッタン) yassa(ヤッサ) na(ナ) kampati(カンパティ). asokaṃ(アソーカン) virajaṃ(ヴィラジャン) khemaṃ(ケーマン), etaṃ(エータン) maṅgalamuttamaṃ(マンガラムッタマン).

etādisāni(エーターディサーニ) katvāna(カットヴァーナ), sabbatthamaparājitā(サッバッタマパラージター). sabbattha(サッバッタ) sotthiṃ(ソッティン) gacchanti(ガッチャンティ), taṃ(タン) tesaṃ(テーサン) maṅgalamuttaman”ti(マンガラムッタマン・ティ).

日本語訳

このように私は聞いた。ある時、世尊は、サーヴァッティ〈舎衛城〉はジェータ林〈祇多林〉にある、孤独な人々に食を施す長者(ちょうじゃ)の精舎(しょうじゃ)〈給孤独園.祇園精舎〉に留まっておられた。その時、一人の見目麗しい女神(めがみ)が、夜半を過ぎた頃にジェータ林全体を照らしつつ、世尊のもとに近づいた。近くにきて世尊を礼拝し、その傍らに立った。その傍らに立つと、女神は偈頌(げじゅ)をもって世尊に話しかけた。

「多くの神々と人々は、吉祥(きっしょう)〈maṅgala〉を求め、幸福(こうふく)〈sotthāna〉を望んでいます。どうか最上(さいじょう)の吉祥(きっしょう)をお説き下さい」

(仏陀はこの女神の問いに偈頌をもって答えられた。)

「愚か者たちに親しまず、諸々の賢者に親しみ、尊敬すべき人々を尊敬すること。これが最上の吉祥である」

「適当な(環境の好ましい)場所に住むこと、今までの諸々の善行(ぜんぎょう)、そして自ら正しい誓願(せいがん)を起こしていること。これが最上の吉祥である」

「博識(はくしき)であり、技芸(ぎげい)を身に備え、(身の振る舞いを)制してよく整えており、その語る言葉が見事であること。これが最上の吉祥である」

「(老いた)母と父とに仕えること、子と妻とを養うこと、秩序ある仕事を行うこと。これが最上の吉祥である」

「施しをなし、法〈真理・道徳・法律〉にかなった行いをなし、親族を養うこと、(他からの)批難を受けない行い。これが最上の吉祥である」

「悪を離れて慎み、酔わせるもの〈酒・麻薬〉を摂ることを断ち、法について誠実であること。これが最上の吉祥である」

「尊敬(そんけい)と、謙虚(けんきょ)と、満足と、感謝と、適当な時に法〈真理・教え〉を聞くこと。これが最上の吉祥である」

「忍耐(にんたい)と、従順(じゅうじゅん)であることと、沙門(しゃもん)〈出家修行者〉に会うこと、適当な時に法〈真理・教え〉について語り合うこと。これが最上の吉祥である」

「苦行(くぎょう)〈仏教的修養〉と、梵行(ぼんぎょう)〈特に性的禁欲〉と、聖なる真理〈四聖諦〉を観ることと、涅槃を得ること。これが最上の吉祥である」

「世俗の事物に触れてもその心が動揺することなく、憂いなく、汚れなく、安穏(あんのん)であること。これが最上の吉祥である」

「これらのことを行ったならば、(その者は)いかなる事物にも敗れることはなく、あらゆる場所にても幸福に向かい行く。これが、彼ら(神々と人々と)の最上の吉祥である」

日本語訳:Ñāṇajoti

脚註

  1. このように私は聞いた( )

    evaṃ me sutaṃ. 漢訳仏典では一般に「如是我聞」とされる一節。ここにいう「我」とは、仏滅三ヶ月後に開かれた第一結集において経を主に誦出したといわれるアーナンダ(阿難)。▲

  2. 孤独な人々に食を施す長者(ちょうじゃ)の...

    Anāthapiṇḍika ārāma. anāthapiṇḍikaとは「孤独な人々に施す者」であり、ārāmaは「園」。
    孤独な者すなわち孤児に施しをする者の名をSudatta(須達)と言った。マガダ国にて偶然仏陀に出遇い、その教導に浴してその場で帰依。故国コーサラに還ってから仏陀およびその弟子達のための僧園とするべく国王の王子の一人Jeta(祇陀)が所有していた林を譲り受け、仏教教団に寄進した。『平家物語』冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」の祇園精舎の「祇園」は、祇陀の園であったその略称であり精舎は僧院・僧園の意。
    ジェータ王子は最初、スダッタから林の買取の申し出に難色を示して無理難題を言ったが、結局スダッタの仏陀への信仰と熱意に負け、その林を譲った。その後のジェータ王子について、伝承では、腹違いの王子ヴィドゥーダバが王位を継承したとき、釈迦族を屠ることへの協力を拒んだために殺されてしまったという。▲

  3. 女神(めがみ)

    devatā. 女神。▲

  4. 偈頌(げじゅ)

    gāthā. 伽陀。詩句・詩文の意。▲

  5. 吉祥(きっしょう)

    maṅgala. めでたいこと、幸運なこと。▲

  6. 幸福(こうふく)

    sotthāna. 幸せ。▲

  7. 最上(さいじょう)の吉祥(きっしょう)

    maṅgala uttama. ▲

  8. 愚(おろ)か者たちに親しまず

    asevanā ca bālānaṃ,. 愚かな人々と付き合うことは時間と労力の無駄であり、むしろ害悪にすらなる場合が多くある。積徳を志す者、涅槃を志向する者にとってその最初に寛容であることは、常日頃親しむ者をよく選び、賢者に近づいてその薫陶や影響を受けること。▲

  9. 今(いま)までの

    pubba. 以前、先の。自身のそれまでの(過去世および現在世における)生涯。▲

  10. 善行(ぜんぎょう)

    katapuññatā. 徳を積む行為。puññaとは「正しいこと」・「利益」。仏教における善悪の基準は畢竟、十善業道・十不善業道として挙げられている。十悪とは殺生・偸盗・邪淫・妄語・綺語・悪口・両舌・慳貪・瞋恚・邪見であり、その逆が十善。▲

  11. 誓願(せいがん)

    paṇidhi. 「自らかくあろう」・「このようにしよう」との強い決意。▲

  12. 博識(はくしき)

    bāhusacca. 世間・出世間とわず、広く様々な知識。仏陀の時代でも教養を身に備えることは徳であり、吉祥であった。▲

  13. 技芸(ぎげい)

    sippa. 諸々の芸術や工芸など。博識であることに同じく、技芸・技術を身に備えていることもまた徳であり吉祥である。▲

  14. 施(ほどこ)し

    dāna. 貧しい者に自らの分に応じて施しをなすこと。または尊敬すべき者に対して寄進をなし、その生活を助けること。▲

  15. 酔(よ)わせるもの

    majja. 酒や麻薬など、人を陶酔させるもの。 majjapānaは「酔わせるものを摂取すること」・「飲酒」。仏教が不飲酒を説くことについての理由は、別項「なぜ酒を飲んではいけないのか」を参照のこと。▲

  16. 尊敬(そんけい)

    gārava. ▲

  17. 謙虚(けんきょ)

    nivāta. ▲

  18. 満足(まんぞく)

    santuṭṭhi. ▲

  19. 感謝(かんしゃ)

    kataññutā. ▲

  20. 忍耐(にんたい)

    khanti. 忍辱、耐え忍ぶこと。▲

  21. 従順(じゅうじゅん)

    sovacassatā. その態度が柔軟であること。▲

  22. 沙門(しゃもん)

    samaṇa. 出家修行者。ここでは特に仏教僧。▲

  23. 苦行(くぎょう)

    tapo. 一般に、仏教ではあらゆる苦行を否定しているといわれるが、しかし言葉としてはこのように用いられ、しかもそれは「吉祥」であるとして讃えられる。ではその「苦行」とは何か。その最たるものは「忍辱」であると仏教では説かれる。諸々の不如意を耐え忍んで、怒りや貪欲などの煩悩に自心が翻弄されないように耐えること、五欲に惑わされないことを、仏教では苦行という。
    仏教において否定される苦行とは、むしろ日本では「仏教の修行」であると見なされ行われている、水行や断食行などを伴う山林抖擻など肉体的に過酷な行為。その期間だけ苦しい思いをしても自心およびその見解を清めることなど出来ず、したがって意味など全くないためである、▲

  24. 梵行(ぼんぎょう)

    brahmacariyā. 特に性的禁欲生活を送ること。▲

  25. 聖(せい)なる真理

    ariyasaccā. 特に仏教の核心である四聖諦のこと。▲

  26. 世俗(せぞく)の事物

    lokadhamma. 世間の事物。▲

  27. 安穏(あんのん)

    khema. 寂静なる心の状態。▲

パリッタについて

帰敬文

上座部 護経要集